よかったです

アマプラのジャンル分けは「SF・サスペンス・ホラー」となっていますが、実態としてはそれらの皮を被った「風刺」作品です。エンタメとして高い水準にありますが、【風刺作品を撮りたいが為に、エンタメの皮を被せている】ので、そこがどちらも中途半端になっていたという印象です。また、根本的に、「アメリカにおける黒人の歴史（特に「扱われ方」）」を知らないと、風刺自体が理解出来ないのでそこの知識が欠けやすい日本人には相性が根本的に厳しい作品でもあります。また、「黒人第一主義」的な思想と思考が根っこにあるので、非黒人（白人+アジア人）の扱いは結構辛辣です。端的に言えば、『Us（我々：黒人）とThey（彼ら：非黒人）』というくくり方で、（歴史的に仕方ないのですが）「赦しと理解と共存」ではなく「怨恨と断罪と拒絶」が感じられる形になっています。それらを前提として、＜エンタメ映画＞としては、＜SFホラー＞として、悪くない…いや「良い」方の作品です。『結局そんな感じなのかーい！ｗ』というツッコミをしそうですが、７０～００年代に制作されたSF（異星人系）作品の殆どはそんな感じです。凍らせたり・船外に放り投げたり・続編でも船外へ放り投げたり・母船でコンピューターウイルス撒いたり・風土病で勝手に自滅したり…と、名作や大作でもツッコミどころある（しかない）オチは結構あります。それらと比較すると、＜敵＞である宇宙人に対して、＜個人＞が対応した流れとしては、そんな悪くない流れだったと思います。（むしろ「良い」方）問題は、【風刺が根っこにあるので、皮となるエンタメは犠牲となっている】点。風刺や暗喩隠喩は分かりやすいものから分かり難いものまで大小含めて色々ありますが、①初の映画製作者は白人だが出演者は黒人（しかし黒人の名前は「制作者」として出てこない）→「UFO（正確には＊＊＊）」をハッキリ撮れたのは黒人※白人の撮影者は＊＊して＊＊られる：白人は失敗したが黒人は成功した　＝＜黒人の勝利＞②＜宇宙人＞と馬とチンパンジー：黒人と白人とアジア人：黒人【のみ】が最終的に成功している※動物自体やそれらへの対応そのものも、伏線的な隠喩にもなっている※黒人が「白人」達を＜使役＞する構図→＜力関係の逆転＞等々があります。エンタメ部分としては、上記した様な隠喩暗喩を、物語的な伏線として活用していたりと、かなり技巧的に作られていますし、映像的な見せ方も秀逸です。ところどころで、『AKIRA』のバイクシーンとか『EVA』の使徒とかがありますが、その他の部分でも色々な「遊び」が含まれています。しかし、前述したように、根本的には怨恨や断罪や拒絶的なものが根として存在しており、それがゆえに、＜共感＞はし辛い部分もあります。ただ、これは本当に仕方ないところであり、喩えるなら、「学生時代に辛い虐めを受け続けた人が、社会人になってもその悪影響が残り続け、結果として、全く無関係な善人に対してすら、キツク当たってしまう」というのと本質的な部分で似ています。制作者側が『俺達が受けた歴史を忘れるな！』と制作しているが故に、＜赦し＞や＜許し＞から離れた考え方となってしまい、＜共感＞や＜共存＞ということから離れていき、「力関係の逆転」や「成果の反転」という、『受けた被害を入れ替える』という構図になっています。この辺りは本当に風刺として秀逸ではあるのですが、その過程として『黒人第一主義』という、ある意味では＜選民＞的な考え方にもなってしまっており、故に「黒人以外への扱い」が＜怒＞や＜恨＞にもなってしまい、それらを感じてしまうと、「日本人＝非黒人」としては、楽しみ難いところもあります。また、アジア人に対する「黒人との比較」も、大きな視点では日本人もその批判対象に含まれてしまうので、そこも心理的に面白さ楽しさを十全に感じにくい部分ではありました。と、そもそも論で言えば、【娯楽映画の皮を被った（借りた）、風刺映画】であり、しかもかなり技巧的・隠喩暗喩的な為に「理解には知識が必要」なのですが、【知識があると、黒人以外は純粋に楽しめない】という作品です。そして、娯楽映画でなく風刺映画であるが故に、知識が無い方が「純粋に面白さ楽しさを感じやすい」反面、意図や意味が理解出来ないので十全に内容を受け入れられない…というジレンマも出てきます。つまり、＜黒人＞にとっては、『力関係の逆転や成果の反転という側面からも、痛快な風刺としても純粋な娯楽としても十全に楽しめる作品』です。しかし、批判非難や風刺の対象である＜非黒人＞：白人やアジア人にとっては『風刺としても娯楽としても視聴が微妙になってしまう作品』です。まさに、じんみんによる『黒人の、黒人による、黒人のための、風刺娯楽映画』が本作品です。この為、＜日本人：非黒人なアジア人＞が視聴すると、A】知識や認識不足で意図や意味が理解し切れないB】意図や意味が理解出来ると、楽しめなくなるC】なんもわからないけど、なんとなく、おもしろいしたのしいから、いいや！のどれかになります。そのどれでも、「１００％」では楽しめないので、そこが日本人にとっては難点だったとは思います。ある意味、「相手からの皮肉や風刺を一切理解出来ない、高校や大学で勉強をサボっていた、あまり考え無い人達」こそが日本人としては本作品を楽しめるのですが、それはそれで、日本人として悲しい状態ではあります。非常に質が高い娯楽（風刺）映画なのですが、余りにも「黒人の為の作品」なので、そこが本当に秀逸であり、同時に、勿体ない作品でもありました。各「役」は短い出演時間であっても一切の無駄が無いので、英語含めて色々調べてみると、制作側の意図や役の意味が分かると思います。が、レビューの前にザックリ見ただけでも、結構勘違いしている「断言」も多いので、調べる際には最低５つくらいの考察や解説や説明を見ておいた方が良いかもしれません。（参考が「１つ」だけだと、間違った解釈や考察を＜正＞と思って、誤解や混乱が増すだけになったりもしそうでした）「黒人の、黒人による、黒人のための」という作品ですが、意図して計画的に制作されていることを考えると、【何も考えてない結果】として、【日本人向けにしかならない邦画群「しか作れない」日本の映画界】は、本作品の気概や意志を見習って欲しいと思いますし、こうした【黒人（自分達）の為の作品】を作った（作れた）ことは、少し羨ましい部分もあります。「（意図せず）日本人向け（内向き）な作品を作り続けた」結果、「特定の何かへの敵意や拒絶が作品に含まれず」、それがゆえに、世界で愛されている・・・という、日本アニメとかを考えると、技術面や思想面で非常に対照的な作品でもありました。本質的には、視聴者を黒人に限定して作っている本作品ですが、そこを加味すると★２になりますし、加味しなければ★４であり、技術面技巧面や映像面演出面で見るならば★５という作品でした。上記の通り、＜非黒人＞である日本人の私としては、『★２をつけてやりたい！』とも思いますが、風刺の質や、それを制作する予算確保視点での娯楽性の高さを考えると、★４～★５をつけざるを得ないと考えました。また、本質的には（繰り返しますが）「黒人の、黒人による、黒人のための」という作品であり、視点をそこに置けば★５にするしかない作品です（同時に、「怨恨と断罪と拒絶の増強」視点では★１なのですが…）。かなり迷いましたが、制作側の考える想定視聴者層と、その視聴者層での評価を思えば、★５が妥当だと考えました。ただ、こうした系統の作品が作られれば作られるほど、和解や共存という部分は遠ざかるばかりにもなるので、将来的な部分は不安ではあります。こういう、娯楽としても高水準でありながらも、風刺や社会問題を知識満載＆技巧全開で、硬派に作ってくれる作品が、いつか邦画にも出てきてほしいところです。映画好きな日本人として、正直に吐露すれば、こうした製作者が存在することは「羨ましい＆悔しい」、そう強く思わされる作品でした。

おしゃれな感じもしながら、独特の不気味なブラックユーモアみたいな独特な不思議で不気味な雰囲気。あの形って、どいう発想から生まれたのか。馬が可愛い。しょっぱな、なんなのかよく分からなかった。

怪異の正体はかなり意表を突いた設定ですので、SF系のホラーが好きならばネタバレ踏む前に観るのをお薦めします。ストーリー面では、作中で中核をなすエピソードである元子役・ジュープとチンパンジーを巡る顛末は極めて残酷で美しく、この部分だけでも見る価値はあります。何故直立した靴をずっと大事に飾っていたのか、大一番のお披露目の舞台にチンパンジーに顔を食われたお姉ちゃん役だった女優を招待したのか……「最悪の奇跡」が引き起こした最悪の結末が最低で最高です。一方で、主人公たちの戦う動機が薄っぺらく、終盤の展開は個人的にはちょっと都合が良すぎるかなぁと感じました。監督はこれまで黒人差別をテーマに織り込んだ作品を撮ってきたジョーダン・ピール監督ですので、今回も「ハリウッド唯一の黒人が経営する牧場」という設定を盛り込んできましたが、テーマの中心は「動物」であって、黒人であることはいまいち物語に絡むことができず、設定過多で終わってしまったかなという印象です。

宇宙人が出てくると思っていたら終わってた。

チャレンジは随所に感じた気がします。