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相撲2021年11月増刊として発行された白鵬の引退記念号。全９８ページのうち82ページがカラーで、厚手の紙の６ページは白黒で白鵬の主な記録がまとめてあるが、この部分が白鵬の相撲史に残る圧倒的な記録が掲載されており貴重。ほとんどの記録は、表になっており、上位10位ほどにランクされている他の力士との比較ができる。ユニークな記録は以下。同一力士から40勝以上したのは白鵬だけで、しかも３人（琴奨菊、稀勢の里、鶴竜）から挙げている。白鵬に10勝以上した力士は４人。決り手上位では上手出し投げの47勝は史上最多というのは白鵬には出し投げのイメージがあまりないだけに興味深い（ちなみに白鵬の上手投げは165勝で史上１位、寄り切りは339勝で史上５位）。優勝後、一度も出場せずに引退した力士は昭和以降では、曙、朝青龍、白鵬の３人だけ（大正は大錦と栃錦）。白鵬が１位で鶴竜が２位という横綱休場日数は表にはなっておらず、休場率や、コロナウイルス関連休場（白鵬は30休）を除いた場合の記録などもみたいところ。カラーページの内容は以下。白鵬引退会見は宮城野親方のものも含まれており、白鵬が横綱になってすぐのときに、日馬富士と二人で１時間通して稽古した話p5など。白鵬物語。白鵬がアニキと慕うモンゴル出身のカメラマン橋田ダワーによるエッセーは、白鵬の人格も高く評価し、モンゴルの諺「藻のある水場には魚が集まる。良い性格の人には人間が群がる」を紹介p17。白鵬が最後の一番の取組前に土俵に額をあわせている写真が掲載され、橋田は「現役最後の取り組みになるのだ」と思い涙したことが書かれている。すべてを出し切った最後の一番のくだりは感動的。私もこの取り組みを見た際に、白鵬が土俵に上がる前に、土俵にキスをしているように見え、これが特別な一番になる予感はあった。取組後に白鵬の妻と子供たちが観客席で泣いている様子で引退を予想したが、優勝インタビューで引退を表明しなかったのは、まわりに気遣う白鵬らしさ。もし、この時に、引退を表明していたら、結びの一番の内容につまらないケチをつけて白鵬の偉大な業績に水を差すような人物もいなかったろうし、一代年寄も与えられていたのかもしれないと思うと、白鵬の人の好さが災いしてしまったことが残念。「白鵬至高の十番勝負」では、ぶつかり稽古のような内容になった貴景勝戦の「かかってこい」という写真が堂々としていてよい。「白鵬の相撲、その変遷」では、若の里戦の分析、後の先p26などを写真で解説。「白鵬の優勝旗手を務めた力士たち」はすべての写真とリストを掲載p28。「白鵬の63連勝」も２勝目が朝青龍戦も含めて、すべての対戦写真を掲載p3２。「雑誌“相撲”の表紙に現れた白鵬」も84冊すべての写真を紹介p36．平成20年２月号の朝青龍との相星決戦で６回目の優勝を決めた表紙には「威信守った！」と書かれている。この時点では、白鵬は日本の伝統を守る代表とされ、悪役の朝青龍に唯一勝てる存在として、人気が高かった。この後も、震災のチャリティーや白鵬杯など、人格的に成長をみせた白鵬が、日本に帰化したにも関わらず、「外国出身力士」として、その「品格」までもいわれのない非難を浴びてきたことを考えると、このタイトル「威信守った！」は哀しい。「白鵬の土俵入りで太刀持ち、露払いを務めた力士p40」では力士の写真と、回数のリストが掲載。巡業のみの力士も掲載。平成23年12月４日の白鵬ただ一回の雲竜型土俵入り（双葉山に敬意を表してp13）の写真は貴重p44．「白鵬21年間の足跡p45」は一年を見開きの２ページほどで紹介。岩手県陸前高田市の被災した風景を背景に土俵入りを行う白鵬の姿は、これが形だけではない、本当の「神事」であり、これこそが横綱の「品格」であることを思わせる一枚p63。白鵬の原寸大手形p82が掲載されているが、原寸より少し小さいのではと思える手形になっている。親指の部分にサインが被っているのが残念．

2021年秋場所。新横綱・照ノ富士が、白鵬の休場でいきなり一人横綱という重圧をみごと撥ね除けて優勝してからいくらも経たないうちに、「白鵬引退」のニュースが飛び込んできて、耳を疑った。たしかに白鵬は全休したがそれはコロナのせいであり、その前も休場が続いていたものの、進退を懸けた名古屋場所では気魄の取り口で復活の全勝優勝を遂げていたからだ。だが話を聴くと、右膝がとっくに限界で、名古屋場所中に引退を悟ったという。本人の意思、決断であればやむを得ない。今は心から「お疲れさま」の言葉を贈りたい。白鵬は、大相撲史上に残る数々の大記録を打ち立てた、紛れもない大横綱、名横綱だ。土俵の外でなんやかんや言われたこともあったけれど、実績がそんな雑音を打ち消してしまっている。もっとも、ものすごく厳しい、評者のどうしようもないヒネクレた目で見てしまうと、白鵬は時代や運に恵まれていたと言えなくもないのでは、と思ってしまう。たとえば、白鵬が目標とし、角界の父と慕っていた大鵬には、同時期に柏戸、佐田の山、栃ノ海といった名横綱が存在した。北の湖には輪島という好敵手がいたし、千代の富士にも弟弟子の北勝海を始めとする強敵がいた。白鵬にも、当初は朝青龍という、同じモンゴル出身の強い先輩横綱がいた。だが朝青龍の引退後は、日馬富士、鶴竜、稀勢の里と、後から昇進してきた横綱がいずれも先に姿を消したこともあり、真の意味で敵と呼べる力士がさほど多くはなかったように思う。もとより、三役クラスにも次世代を担う候補は多かったけれど、ケガその他の理由でいまひとつ伸び悩んだ力士が多い印象がある。だから、もしも白鵬に、大鵬、北の湖、千代の富士らが戦ったのと同等かそれ以上のレベルのライバルがいたら、さすがにここまでの数字を残すことは難しかったのではないか、という気もするのだ。そうは言っても、幕内優勝45回、横綱在位84場所（ちょうど14年間だ）、横綱としての勝ち星899（あと1つ勝っていれば900勝とキリがよかったのに）、などの数字は、おそらくアンタッチャブルの部類であろう。本ムックでは、不滅に近いと思われるこうした記録を、様々な角度から分析し紹介している。近年は多種多様な情報を収集・蓄積しているようで、なかなかに興味深いデータも紹介されている。恥ずかしながら、評者が今ごろになって知った情報もある。たとえば、横綱土俵入りの際に露払いや太刀持ちを務めた力士とその回数について。評者は、一門の力士が適当に交代しつつ務めていると思っていた。それは決して間違いとは言い切れないようだが、実際はある程度顔ぶれが固定されていたようだ。さらに、横綱とそれらの力士、あるいは露払いと太刀持ちの力士同士の取組があるときは、別の力士が務めるとの倣わしにもなっているようだ。よく考えてみれば当然なのだが、評者は迂闊にも今の今まで気づかなかった。大恥。もっと言えば、本場所では関取が務めるが、地方場所や巡業などではその“縛り”がやや緩くなるらしい、ということも知った。恥だなあ・・・。簡単な半生記が綴られている。来日当時はガリガリで、とてもじゃないがモノにならないと思われ、もし声がかからなければそのまま翌日帰国する予定だったとか。そうなっていたらこんな大横綱は存在しなかったことになる。人間の運命、いつどこでどう変わるかわからない。引退会見がほぼ全文書き起こしで収録されている。周囲の人びとへの感謝の気持ちと言葉、そして満足感や安堵の表情で溢れている。長年相撲界のトップに君臨し続けた責任や重圧、さらには孤独から解放されたこともあろうが、それだけ人間的に磨かれたことも窺わせる。巡業や社会貢献活動などで見せる柔和な表情は、土俵上の鬼神の如き闘志とは対照的。子供たちの前で見せる屈託のない笑顔は、まさに強くてカッコいい“おすもうさん”だ。トリビア的な記事も。白鵬の土俵入りはご案内のとおり不知火型だが、一度だけ雲竜型で行ったことがある、と写真つきで紹介されている。・・・のはいいが、その理由が、評者が探した限りではどこにも書かれていないようだ。見落としたろうか。写真を見るに、神社かどこかの奉納土俵入りのようだが。・・・ということで、ネットで調査。宇佐神宮で、往年の大先輩横綱・双葉山に敬意を表したとのことだ。スポーツ選手に限らず、引退のときは必ずやってくる。本ムックは、例によって欲を言えばキリがないが、引退を記念するに相応しい保存版と思う。今後は年寄として、第二第三の白鵬を育ててほしい・・・が、それだけの素質や将来性がある若者は現れるだろうか。ところで。ムック中に、白鵬の“実物大”手形が色紙の趣で掲載されている。だが、評者がそっと自分の手を重ねてみたら、なんと、ほとんど大きさが同じだった。・・・そりゃたしかに評者は、チビ・デブの典型みたいな、お相撲さんで言えばアンコ型の体形をしてるけどさ、さすがに白鵬と比べれば三回りも四回りも小さいぞ。なのに手の大きさがほぼ同じって、絶対に何かの間違いだと思うよ。

楽しんでいます。

通信が万全で気持ちが良い。

着物を着ると「若隆景」が大きく見える。付録の名鑑も充実して今回は特に良いです。

すぐに届いてよかった。

全力士　年寄　行事　呼び出しの名鑑が付録についていた。